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リロケーションとは?

2021.04.10
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リロケーションとは、一時的に家を賃貸物件として貸し出すことを指します。転勤などで一時的に家を空ける場合など、管理が難しい期間のみ業者に委託するのです。

リロケーションを行うと、留守中でも家賃収入を得られる点がメリットだといえるでしょう。賃貸契約の終了後は、貸し出す前と同じように自分の不動産として所有できます。
留守にしている期間も住宅ローンや税金は発生し、さらに転勤先でも費用はかかるものです。そのため賃貸収入によって、出費の負担を軽減させられるでしょう。

リロケーションが始まった背景

リロケーションを実施する際は、借主と貸主の間賃貸借契約を結ばなければなりません。
従来の借地借家法ではリロケーションに対応しておらず、契約満了後にきちんと退去するかどうかわからないという懸念点がありました。正当な理由がないと貸主から借主に退去を求めることができなかったのです。

しかし、2000年に施行された定期借家法により、期間を限定して家を貸し出す「リロケーション」が可能となりました。
これまで抱えていた不安が解消されたことから、不動産賃貸会社がリロケーションサービスを手がけるようになったのです。また、リロケーションを専門とする企業も台頭するなど、リロケーション市場は拡大しています。

リロケーションの利用者

リロケーションの物件は賃貸借期間が限定されるなどの特性上、一般の賃貸物件に比べて利用する際の制約が多いようです。
そのため、リロケーションの利用者は限られる傾向にあります。
リロケーションを利用するのはどのような方が多いのでしょうか。貸主、借主それぞれの特徴について解説しましょう。

①リロケーションの貸主

リロケーションの貸主は、「売却を考えていない不動産を所有しており、何らかの事情で一定期間のみ家を空ける」という方が一般的です。
家を空けている間自分で管理することが難しい場合は、リロケーションサービスを手がけている業者に委託して賃貸物件として貸し出します。

②リロケーションの借主

リロケーションの借主は、理想的な物件が見つかっていない、不動産購入のために貯蓄している方が多いようです。
期間限定のリロケーションは比較的賃料が安価であるため、住みたいエリアは決まっているという方にとって、出費をおさえられる方法だといえるでしょう。

リロケーションを利用する期間

定期借家契約に法的な期間の定めはなく、借主と合意した期間であれば自由に設定することができます。
ただし、あまりに短い期間では借主側の負担が大きくなり、希望者が限られてくるでしょう。そのため、契約期間は短くても半年、複数年とすることが多いようです。

しかし、短期間の定期借家契約でも、再契約すれば更新は可能とされています。
短期契約を繰り返せば、明け渡しのタイミングがずれてしまったときのリスクに対応できるでしょう。ただし、再契約には借主の同意が必要です。

空き家のまま維持する場合と賃貸物件として出す場合のメリット・デメリット

①賃貸物件として出すメリット

空き家となっていても、固定資産税など納税義務は発生します。また、住宅ローンが残っている場合は返済もしなくてはなりません。
賃貸物件として貸し出すことで家賃収入を得られ、出費による負担を軽減させられます。

また、長期間空き家のままにしておくと、空き巣に入られる可能性があるでしょう。賃貸物件として貸し出すことで家を不在にする時間が減るため、防犯対策にもなるのです。
維持管理の点でもメリットがあります。不動産は長期間使用されないと、カビが発生するなどの理由から建物の劣化にもつながってしまうのです。借主や業者によって維持管理されることで、不動産の劣化を防ぐことも期待できるでしょう。

②賃貸物件として出すデメリット

一度賃貸物件として契約を結んでしまうと、後から契約期間の変更をすることはできません。
契約期間が過ぎれば再び家に住むことは可能ですが、予定を変更して早く家を明け渡してもらうことは難しいと考える方がよいでしょう。
賃貸物件として貸し出すデメリットとしては、他人が使用するため家が傷付くおそれがあることが挙げられます。
借主の審査は厳しくしている企業が多いとはいえ、他人に貸し出す以上、多少の損傷は覚悟しておくべきでしょう。

また、賃貸物件として貸し出す際は、ハウスクリーニングなどの手間がかかる場合もあります。入居者を確保するためには、ある程度の手入れは必要でしょう。
住宅ローンは、原則としてローンの返済者が居住していることを条件としています。そのためローンの返済が終了していないにも関わらず、他人に貸していることが銀行に発覚した場合、一括返済を求められる可能性もあるようです。事前に申告することで認めてもらえるケースもあるため、不安な方はあらかじめ銀行に相談しましょう。

普通借家契約として出す場合とリロケーションとして出す場合のメリット・デメリット

①リロケーションとして出すメリット

普通借家契約では、正当な理由がない限り貸主から借主に退去を求めることができません。
しかしリロケーションを利用すれば、賃貸期間が決まっていることから、期間満了後に自宅に再び住むことができます。リロケーションの際に結ぶ定期借家契約は、貸主と借主双方の合意がなければ再契約ができないためです。

また、貸主が契約を結ぶ相手は業者であり、修繕などのサービスが充実している場合が多いとされています。さらに、借主とのトラブルも業者が対応していることがあるため、貸出中に家のことを気にかける必要はありません。

③リロケーションとして出すデメリット

期間限定で貸し出すことになるため、リロケーションは通常の賃貸物件よりも2~3割ほど賃料を安く設定しているようです。
さらに、管理を委託した場合にかかる手数料は、安くても家賃の5~18%程度とされています。
リロケーションの場合は、上記に加えて管理手数料が8~10%程度かかるのです。これらの費用が発生することがデメリットといえるでしょう。

リロケーションの依頼先を選ぶ際の注意点

近年では、どの程度の賃料で所有している不動産を貸し出せるのか、インターネット上で複数業者を一括で見積もるサイトもあります。

しかし、リロケーションの業者は、家賃だけで決めてはいけません。また、会社の規模や物件数などで判断するのも避けた方がよいでしょう。
リロケーションは特殊な賃貸運営と考えられており、借主が限定されてしまうのが特徴です。そのため、業者の実績やノウハウは重要なポイントとなります。業者選びの際は、担当者の話をきいて、迅速かつ丁寧な対応してくれる業者を選ぶとよいでしょう。

インターネット上などで業者の評判を確認するのも、業者選びの方法のひとつです。自分の不動産をどの業者なら安心して委託できるのか、慎重に見極めるようにしましょう。

リロケーションの形態

リロケーションには大きく分けて以下の3つの形態が存在します。

・家の持ち主と入居希望者が賃貸契約を締結し、リロケーション業者が仲介をおこなう形態
・リロケーション業者が不動産所有者の代理人として、入居希望者と賃貸契約をおこなう形態
・不動産所有者からリロケーション業者が賃借し、入居希望者と賃貸契約をおこなう形態

不動産を所有している貸主が入居希望者と直接契約をすれば、どのような人が使用するのか確認できて安心できそうです。
しかし、貸主が審査や契約を行うことが難しい場合は、リロケーション会社が代理して審査・契約をする形態も散見されます。

リロケーション業者と賃貸借契約を結び、リロケーション業者が入居希望者と賃貸契約する形態はサブリース型とも呼ばれるようです。
サブリース型では、入居希望者を貸主が判断することはありません。しかし、リロケーション業者が家賃保証をしてくれる場合も多く、より手厚い保証を期待できるでしょう。

リロケーションを行う前に確認するべき点

リロケーションを行っても、すぐに家賃収入が発生するわけではありません。ほかの賃貸物件と同様に、入居者が決まらず空室になってしまうリスクがあります。賃貸契約が進まずに入居者が決まらない場合は、賃料設定の見直しが必要となるでしょう。

また入居者が決まらない原因として、リロケーションを任せる賃貸管理会社の能力不足が考えられます。空き室リスクを回避するには、リロケーションを依頼する前に、複数の業者の条件や内容をしっかりと比較、厳選して決めることが重要です。

また、家賃収入がある場合は、確定申告を行う必要があります。海外への転勤でリロケーションを行う場合は、納税者本人に代わって手続きを行う納税管理人を税務署に届け出なければなりません。日本国内に在住する家族や友人などに依頼することが多いようですが、専門家である税理士に依頼することをおすすめします。いざという時のトラブルも相談しやすいので安心できるでしょう。

時差がある場合はビデオ通話よりメールがメインになるなど、事前に連絡手段も決めておくとスムーズに打ち合わせを進められます。

もう一点は、家の鍵についてです。リロケーションから戻ってきた家の鍵は、安全性を確保するために交換する方が得策でしょう。借主であった住人が、合いカギを作って返却しないもケースもあり得ます。鍵の交換費用は、貸主と借主のどちらが負担するかを最初に決めておくことも、トラブル回避につながるでしょう。

まとめ

リロケーションを利用する際は、自分の大切な財産である不動産を任せられる業者かどうかを見極める必要があります。

賃貸契約も特殊であるため信頼のおける業者に相談し、しっかりと内容を把握した上で契約を結ぶとよいでしょう。

また、期間限定で貸し出せるため賃料は安くおさえる必要があり、さらに手数料もかかります。

自分が家を空ける期間中代わりに管理してもらえる上に、多少の家賃収入を得られる程度に考えておくのがよいかもしれません。