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税金はどっちがお得!?賃貸VS売却

2021.06.10
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賃貸(リロケーション)する場合と売却する場合とでは、いったい税金はどちらが安いのでしょうか?不動産は経費として計上できる項目が多いので、節税効果が高いですが、賃貸と売却では税の種類はもちろん、税額の算出方法なども異なるため、事前によく調べておく必要があります。

今回は確定申告の手順・方法などの情報も掲載しているので、今後リロケーションを考えている方もぜひ参考にしてください。

賃貸(リロケーション)でかかる税金は?

リロケーションによって得た収入が年間20万円以上であれば、「所得税」を納める必要があります。例えば1年に150万円の家賃収入が入り、必要経費として50万円がかかったとしましょう。

リロケーションで得た不動産所得は次の式で算出されます。

リロケーションで得た収入-必要経費=不動産所得

150万円-50万円=100万円

家賃などで得た収入から、減価償却費、管理費、修繕費などの必要経費を引いた分が不動産所得として認められ、課税対象となります。上の例の場合、不動産所得である残りの100万円に課税され、「所得税」として税を納めなければなりません。

売却でかかる税金は?

不動産で売却益を得ることを譲渡所得と言い、譲渡所得が3,000万円以上であれば、超えた部分に「所得税」、「住民税」の2つの税金が課せられます。譲渡所得が3,000万円以上になる不動産は短期譲渡所得・長期譲渡所得の区分に分けられ、一定の税率で税額が算出されます。

ただし、売却益が購入金額より安くなった場合や、自宅を売却した際の譲渡所得が3,000万円以下の場合税金はかかりません。

譲渡所得を求めるには次の式を用います。

譲渡収入-(取得費+譲渡費用)-特別控除額=譲渡取得

譲渡収入とは、不動産の売却価格、取得費とは不動産購入額、譲渡費用とは印紙税や立退料など売却時にかかった諸経費を指します。そして、特別控除額とは「自宅」を売る場合や公共事業のために土地を売却したときなどに発生する特例のことを言います。

例えば、自宅のように居住用財産として認められる不動産を売却すると、特例として売却益から最大3,000万円が控除されます。この3,000万円の控除を受けるには売主・買主が親子や夫婦でないこと、売却した不動産がほかの特例の適用を受けていないなど、いくつか条件があるためよく確認し、注意しましょう。

また、所有期間が10年以上の自宅を売却する場合は上記の3,000万円控除とともに軽減税率の特例が適用されます。

ちなみに、譲渡所得は分離課税と呼ばれるカテゴリに分けられており、分離課税には「不動産売却で得た利益が同じであれば、(不動産売却利益以外での)所得の多い・少ないにかかわらず同じ税額になる」という特徴があります。

例えば、年収800万円の人と年収400万円の人が不動産を売却して、それぞれ1,000万円の利益が出ても、かかる税金は全く同じというわけです。分離課税の仕組みは給与所得などほかの所得が多い人ほど有利と言えます。

不動産を売却した場合、所有期間で税率が変わる!?

先述したとおり、譲渡所得が3,000万円以上になる不動産は短期譲渡所得・長期譲渡所得の区分に分けられ、一定の税率で税額が算出されるようになっています。不動産を売却した年の1月1日で所有期間が5年以上であれば「長期譲渡所得」、5年以下であれば「短期譲渡所得」と分類され、売却する不動産の所有期間の長さによって適用される税率が異なります。

税額の計算方法は次の通りです。

【長期譲渡所得】
譲渡所得×15%=所得税
譲渡所得×5%=住民税
→合計税率:20%

【短期譲渡所得】
譲渡所得×30%=所得税
譲渡所得×9%=住民税
→合計税率:39%

上の式を見れば、短期譲渡所得と比べて長期譲渡所得のほうが税率が低いことが確認できます。もし、「あと少しで所有期間が5年以上になる」ということであれば、すぐに売却せず、5年を超えるまで待つのも税率を下げるための一つの手と言えるでしょう。

自宅用ではない不動産を売却する場合…

自宅用ではなく投資や節税などの目的で購入した不動産を売却する場合、3,000万円控除は受けられません。そのため、税金を低く抑えるには自宅の売却より所有期間の長さが一層重要なカギになります。

このような不動産を売却する場合も、税率の低い長期譲渡取得になるのを待つ方が良いと言えるでしょう。

確定申告の進め方

不動産を売却したり、リロケーションで所得を得ると、確定申告をおこなう必要があります。

確定申告書B、不動産売買契約書など確定申告に必要な書類の種類・数は、リロケーションと売却とでは異なるため、事前に何が必要なのかしっかりと確認しておきましょう。必要な書類が揃ったら2月16日~3月15日までに提出書類の作成と納税をおこないます。

今は無料で使える確定申告ソフトもあるのでそれらを活用したり、国税庁ホームページの「確定申告書等作成コーナー」でも簡単に書類を作成できます。提出方法は、「確定申告書等作成コーナーで作ってe-Taxで送る」、「所轄の税務署に持っていく」、「所轄の税務署へ郵送する」の3つがあります。

不動産で得た所得の申告方法には「青色申告」と「白色申告」の2種類があり、不動産所得を得るリロケーションは青色申告を利用して最大65万円まで控除できます。反対に、譲渡所得を得る売却の場合、青色申告は利用できません。
リロケーションで所得を得ている方は青色申告をうまく使いながら、税額を抑えると良いでしょう。

確定申告時に必要な書類

リロケーションで不動産所得を得た場合
リロケーションでの確定申告は、青色申告にすることで、青色申告特別控除や損失の繰り越しといったメリットを受けられます。条件として、事前の申請および複式簿記による帳簿、貸借対照表と損益計算書などの提出が必要です。申請がなければ、比較的簡易な白色申告となります。ここでは青色申告に必要となる代表的な書類をご紹介します。

・確定申告書B、不動産所得用の青色申告決算書(税務署・国税庁公式サイトより)
・不動産売買契約書、賃貸借契約書、家賃送金明細、売渡精算書、譲渡対価証明書(不動産会社より)
・借入返済表(住宅ローンなど融資を受けている場合)
・固定資産税通知書
・火災保険、地震保険などの損害保険証券
・その他、管理費、修繕積立費、修繕費用など経費が確認できる請求書、領収書など

不動産売却で確定申告を行う場合
土地や建物を売却して譲渡所得を得た場合は、確定申告が必要です。ここでは確定申告に必要となる代表的な書類をご紹介します。特例を利用する場合は、別途必要な書類を用意しましょう。

・確定申告書B、確定申告書第三表(分離課税用の申告書)、譲渡所得の内訳書(税務署・国税庁公式サイトより)
・不動産売買契約書(不動産購入時および売却時)
・仲介手数料などの領収書(不動産購入時および売却時)
・登記事項証明書(売却した不動産を管轄する法務局より)
・その他、固定資産税の清算書、登記費用の領収書など

どちらのケースも、勤務先の源泉徴収票など所得を明らかにできる書類、マイナンバーカードなどの本人確認用の書類、還付を受ける際の口座番号といった、一般的な確定申告で必要となるものを用意しましょう。

まとめ

リロケーションは減価償却費、管理費、修繕費など、必要経費として計上できる項目が非常に多く節税効果が高いと言えます。ただ、売却の場合も特別控除が認められれば、大幅に税額を抑えることが可能です。

リロケーションも売却も、所得の額によっては税金自体発生しないこともありますし、長期譲渡所得になるまで待つ、確定申告は青色申告でおこなうなどコツを押さえていれば、どちらも十分に税金対策をおこなえます。