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空き家リスク徹底検証

2020.01.15
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近年、少子高齢化や人口減少などの影響により、地方を中心に空き家が増加し、社会問題化しています。空き家が増加する原因としては、親が住んでいた家を相続したが、住む人がおらず、そのまま放置してしまっているというケースが多くみられます。

住む人がいないからと言って、家を解体するには解体費用がかかりますし、住宅の建っていない土地だけになった場合は固定資産税が跳ね上がってしまいますので、下手に壊すこともできないというのが現状です。

しかしながら、空き家を放置することには、公益の観点からも個人の観点からもさまざまなリスクがあります。具体的にはどのような事態が想定されるのでしょうか。

空き家リスクとは?

空き家リスクとしてまず考えられるのが、建物の老朽化です。一般的に人が住まない建物のほうが劣化のスピードが早いと言われています。建物の劣化を防ぐには、定期的な換気や通水が必要になります。

次に、景観の悪化の問題です。老朽化した建物はもちろん、手入れされていない庭では雑草が生い茂ったり、木の枝が道路や隣家まで伸びたりして、景観を乱します。それだけではなく、害虫が大量発生したり、通行の妨げになったりして、近隣トラブルに発展する可能性もあります。

次に、防犯上の不安です。空き家には不審者が住み着いたり、犯罪の拠点にされてしまったりする可能性もあります。また、放火のターゲットにされたり、粗大ゴミの不法投棄を招きやすくなったります。

ほかには、防災上の不安もあります。地震や大規模な災害が発生した際、建物が倒壊したり、火災が起きたりする可能性が高く、非常に危険です。また、老朽化した建物から壁や屋根が落ちて歩行者に当たるなど第三者に損害を与えた場合は、損害賠償をしなければなりません。

そして、「負の遺産」としてのリスクです。たとえ空き家であっても、所有している限り所有者は固定資産税を支払わなければなりません。また、リスクに備えて火災保険に入ろうと思っても、空き家は火災保険が保証する「住宅」とは見なされません。そのため、通常のものよりも保険料が高額になったり、そもそも加入できないという保険会社もあります。さらに「特定空き家」指定されてしまうと、固定資産税が増額されるなど、さまざまな不利益を被る可能性もあります。

「特定空き家」とは?

年々深刻になる空き家問題に対応するため、2015年に「空家等対策特別措置法」が施行されました。この法令により「特定空き家」に指定されると、固定資産税の軽減措置対象から除外され、大幅に増税されることになります。また、自治体の助言・指導、勧告、命令に基づく改善を怠った場合、50万円以下の過料が科されることもあります。

では、どのような場合に「特定空き家」に指定されるのでしょうか。国土交通省によると、以下のような状態にある空き家等を指すと定義されています。

①倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
②著しく衛生上有害となるおそれのある状態
③適切な管理が行われないことにより著しく景観を損なっている状態
④その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態

「特定空き家」に指定されないためには、建物の老朽化を防いだり、庭の手入れを定期的にしたりする必要があります。そのためには空き家として放置するのではなく、自分が住むか、人に貸すか、売却するか、いずれかの方法が考えられます。

所有する空き家を貸し出したい場合、一般の不動産会社に依頼するほか、「空き家バンク」に登録するという選択肢もあります。「空き家バンク」とは、全国の自治体が運営している空き家の仲介サービスです。自治体によっては修繕費として補助金が支給される場合もありますので、まずは各自治体のホームページを確認してみることをおすすめします。

また、「定年退職後に空き家となった実家に移り住みたいが、定年まであと数年ある」というような方は、リロケーションという方法もあります。リロケーションとは、転勤などで一時的に家を離れなければならない人が、一定期間だけ家を貸し出すというものです。

普通借家契約では貸主の都合で入居者を追い出すことはできませんが、リロケーションは定期借家契約ですので、オーナーの都合のいい期間のみ契約を結ぶことができます。最近はリロケーション専門の不動産会社や、リロケーションに力を入れている不動産会社も増えてきたので、ぜひ相談してみてはいかがでしょうか。

空き家問題はひとごとではない!

総務省の調査によると、2018年の全国の空家率は13.6%と過去最高を記録。その数は毎年増加しており、今後も増え続けることが予想されます。

都心部に住んでいる方にとってはあまり身近な問題だとは感じられないかもしれません。しかし、空き家率が30%を超えると財政が破綻するとも言われています。実際、2007年に北海道夕張市が財政破綻した際の空家率は33%だったそうです。今後も空き家が増加し続けることで、全国の自治体や、最悪の場合日本全体に悪影響を及ぼすきっかけのひとつになる可能性もあるのです。

相続の話題はデリケートなものなので、なかなか話す機会がないという方も多いでしょう。しかし、親が亡くなってから慌てないで済むよう、日頃から親と話し合っておくことが理想的です。専門家などにも相談しながら、早めに対策を考えておくことをおすすめします。